こころの病にかかるということ|つわぶきクリニック|京都市山科区の児童精神科、心療内科、精神科

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こころの病にかかるということ

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こころの病にかかるということ

こころの病にかかるということ

みなさんは、『こころの病』と聞いて、なにを思いますか?

よく聞く代表的なこころの病気は「うつ病」でしょうか。

『うつ病はこころの風邪』というフレーズをご存知でしょうか?これは、精神医学の世界以外ではなかなかうつ病が認知されない中、うつ病を周知しようとして20世紀の終わりに製薬会社が作って広めたキャッチコピーです。

では、『風邪』と聞いてなにを連想しますか?

「誰でもなる」「栄養をとって寝ていれば治る」「放置しても、気づけば治っていることもある」そんなイメージはありませんか?

このキャッチコピーによって、バブル崩壊後の日本で「うつ病」という病名は広まったといえるでしょう。しかし、この『うつ病はこころの風邪』というキャッチコピーには落とし穴があるのです。「誰でもなる」のはうつ病と風邪の共通点かもしれません。でも、うつ病は「寝ていても治らない」ですし、「放置したら悪化」します。

他の項でくわしく説明しますが、精神科の病気というのは病名を挙げるだけでもたくさんあります。そして、そのどれもが「誰でもなりえる」病気なのです。
確かに、うつ病になりやすい性格とか統合失調症になりやすい遺伝素因なども存在はします。ですが、歩道を注意して歩き、常に青信号でしか横断歩道を渡らなくても、車が歩道に突っ込んできて交通事故に遭ってしまうことがあるのと同じように、精神科の病気も生きていれば誰でもなるときにはなってしまいます。ガンになる人とならない人がいるように、足が速い人と遅い人がいるように、それは人間が操ることのできる事柄の外にある「運」のようなものです。医師も病院も「神様」ではありません。そうならないようにとどれだけ頑張ってもどうにもならないことがあることを、私は医師として経験してきました。私以外の医師でも同じような経験があると思います。そしてそれは、おとなでも子どもでも変わらないと言えます。精神科の病気になってしまうことは誰にでも可能性があることです。

YouTuberという職業が認められたり、LGBTQ+の問題が活発に話し合われたり、同性のパートナーを夫婦に準じる扱いをする自治体が出てきたように、世の中は多様性を認めつつあります。長年、人工妊娠中絶に反対していたローマ教皇庁も、2015年の特別聖年を機に、「中絶をした女性に許しを与える権限を全司祭に認める措置」を聖年期間だけでなく永久的に継続する、とフランシスコ教皇は発表しました。これはキリスト教、カトリックにとっては画期的なことでした。

しかし、このように多様性が認められてきている一方で、日本では不登校の子どもは増え、全体として自殺者数は減っているにもかかわらず未成年の自殺は増えています。仕事で抑うつや不眠を訴えて休職する人、退職する人も後を断ちません。多様性を認める社会であると言いながら、また、実際にそれを裏付けるような事実もあるのに、なぜこんなに生きにくい世の中になってしまったのでしょうか?

これからの時代はやりたいことを仕事にする、人それぞれの個性が重視されるようになるなど、そのような言葉を聞いたり、見かけたりしたことが多くなりました。また、「自分軸」という言葉もあちこちで見かけます。他人軸ではなく自分軸で生きるということは、「他者が自分にどうしてほしいのかよりも、自分がどうしたいのかを優先する」ということです。でもこれは、「ワガママを通す」ということではありません。この個性が重視される時代において、最も大事だと言われていること、それは「調和」です。「自分軸」でありながらも、世の中の流れ、他者との関わり、その中で「調和」を意識する。その上で「自分軸」を貫く。この「調和」を真ん中に置いて、「自分軸」が生かされて、世の中が回っていくのであれば、いつかうつ病なんていう病気はなくなるのかもしれません。しかし、「調和」と一言で言っても簡単なことではありません。自分軸を「ワガママを通す」と考えている人はことさら多いのです。したがって、どんな時代でもうつ病がなくなることはありません。

別の言い方をすると、「どんな時代であってもその時代を生きにくいと思う人はいる」し、「生きにくい環境で生きていかないといけない人は出てくる」ということです。「自分軸」で生きるんだ!とワガママを通す人ばかりであれば、いつかぶつかって軋轢が生じるのは自明の理です。どんなに時代が変わろうと、「こころの病気」は増減はあれどもなくなることはないと、私自身は考えています。

『こころの病気になってしまった!』と思うと、ショックが大きいかもしれません。でも、こころの病気は誰でもなることがあるもの。たまたま、今のあなたがなってしまっただけ。交通事故に巻き込まれたようなものだと考えましょう。その経験を乗り越えたあなたは、きっと病気になる前のあなたよりも輝いていけるはずです。

当院では、そうなるためのお手伝いをさせていただければと思っています。