こころの病の種類について|つわぶきクリニック|京都市山科区の児童精神科、心療内科、精神科

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こころの病の種類について

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こころの病気の種類について

こころの病気の種類について

欧米において、最初にこころの病が記述されたのは、古代ギリシア時代の「咽頭異常感」でした。ヒポクラテスは更年期の女性が起こす病態であると考え、身体の中で子宮が転がり回っているからだとし、子宮を表すhysteraという単語から、ヒステリーと名づけました。その後、18世紀になってこれをヒステリー球と呼ぶ人たちが現れます。

一方、中国においては、後漢の医学書に「女性で、喉に炙った肉のようなものがひっかかっている感じがする症状がすれば、半夏厚朴湯が適応である」と書いてあります。

西洋東洋を問わず、最初のこころの病の記述は「咽頭異常感・灼熱感」であるということです。ちなみに現在の日本でも、咽頭異常感を訴える患者さんに対して半夏厚朴湯を出すことは比較的よくあると思います。

このヒステリーは、現在では身体化障害に当たると言われています。診断名としては転換性障害や解離性障害のことです。

時代は下って18世紀になると、こころの病気は非常に細かく分類されていきます。しかし一方で、フランスのピネルは「精神疾患は元来1つであり、それが一人の患者さんの中で変化(進行/回復)する諸段階において種々の症状が出現するのだ」という単一精神病論を提唱しました。ドイツではクレペリンが「早発性痴呆(今でいう破瓜型統合失調症)」と「躁うつ病(躁うつ病とうつ病)」の二大精神病論を唱えました。クレペリンは分類に当たって“病気の原因、症状、経過、転帰、特定の解剖学的変化”の5つを重要視していました。このようにこころの病気について分析的に考えていくものを「精神病理学」といい、わたし自身は非常に好きな分野なのですが、現在の精神科における研究の中心は「画像」と「DNA解析」などであり、精神病理学は廃れていく傾向にあります。
しかし、この画像があるからこそ診断ができるのが認知症などの疾患であり、DNAを解析するからこそ遺伝していく病気(ハンチントン舞踏病)を診断することができるのです。

実は、こころの病気については、「なぜうつ病になる人とならない人がいるのか」「なぜ認知症になる人とならない人がいるのか」など、「これが原因だろう」と推測されているものこそ増えてきましたが、まだまだ原因を調べるのは道半ばの分野です。ですから、最初に言われた病名と現在の病名が変わっていくといったことが起こり得るのです。

現在では、国際的な病気の分類であるICD-10では、全ての病気を大きく9つの分類がなされ、その下位分類として5〜10程度の病気が分類されています。米国精神医学会が発表するこころの病気の分類であるDSM-5TRでは、19の病気の群に分類され、それぞれに下位分類があります。

人間は分類することを好みます。5つ挙げた条件の3つに当てはまれば◯◯病、と言われると安心する患者さんが多くいます。でもひょっとしたら、これは診断名が乱立していた18世紀に戻っているのかもしれません。

わたしが精神科において大事だと思っていることのひとつに、目の前の患者さんの症状と真剣に向き合う、というのがあります。他の人がカルテを見てもわかるように、ある程度推測される(当てはまりそうな)診断名をカルテの上部に書いていますが、そこに書かれた病名が全てではありません。精神科の病気の症状は多種多様で、この人とこの人、全く症状は違うけど同じ病気なの!?ということも多々あります。そして精神科医は常に、この診断であっているのか、この治療であっているのかということを考え続けていると思います。

こころの病気の種類を羅列することがいかに無意味か、ということを理解していただきたくて、この記事を書きました。大事なのは何病かということではなく「その人が何に苦しんでいるのか」です。診断名は精神科医の間での共通言語ではありますが、患者さん自身がそこにこだわる必要はないのかもしれません。